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ルタテラ®で治療を受ける患者さんとご家族の方へ

監修:
関西電力病院 神経内分泌腫瘍センター
センター長 学術顧問
今村正之先生

NENには、腫瘍ができる部位や腫瘍細胞の悪性度、ホルモン症状の有無、病気の進行度、遺伝性疾患の関与など、さまざまな分類の仕方があります。それらの分類を考慮した上で、治療方針が検討されることになります。一人一人の患者さんに最善と考えられる治療法を選択するためには、正確に診断・分類がなされることが大切です。

主な分類
部位 悪性度 ホルモン症状 病期(病気の進行度) 遺伝性疾患

部位による分類

神経内分泌細胞は全身に存在するため、腫瘍も全身の臓器に発生する可能性があります。発生する部位として多いのは消化器と肺で、消化器が約70%、肺や気管支が約25%を占めています。消化器では、特に膵臓と直腸が多いことが国内の調査で報告されています。
発生する部位によって「前腸、中腸、後腸のNEN」に分類されます。前腸は甲状腺、肺、気管支、胃、十二指腸、膵臓など、中腸は小腸、虫垂、上行結腸、後腸は横行結腸、直腸が該当します(図1)。発生する部位によって、NENの悪性度が異なり、治療方針も異なってきます。

図1 NENの主な発生部位

図 NENの主な発生部位

悪性度による分類

膵・消化管NENの分類

2019年のWHO病理分類では、組織学的に高分化のNENをNETと称し、低分化でKi-67指数が20%を超えるNENをNECと呼ぶことになりました。

 
分化度組織学的には大きく神経内分泌パターンを示す高分化型のNETと組織学的に低分化(小細胞型や大細胞型)のNECの2つに分類されます。
Ki-67指数「Ki-67」という細胞増殖に関わるたんぱく質が染色される細胞(Ki-67陽性細胞)がすべての腫瘍細胞の内どのぐらいの割合を占めているかを示す指標です。
Ki-67指数が大きいほど、腫瘍細胞の増殖速度が速いということになります。
核分裂像細胞を染色して、核分裂をしている細胞が2平方mm中にいくつみられるかという指標です。
核分裂数が大きいほど、腫瘍細胞の増殖速度が速いということになります。

これらの指標から膵・消化管NENは、比較的悪性度が低く高分化型の「神経内分泌腫瘍(NET)」と、悪性度が高く低分化型の「神経内分泌がん(NEC)」に分類されます(表1)。

表1 膵・消化管におけるNENの分類

表1 膵・消化管におけるNENの分類

WHO Classification of Tumours of Endocrine Organs. Eds: Lloyd RV, et al. 4th Edition, 2017 IARC Press, Lyon France.
WHO Classification of Tumours. Digestive System Tumours. Eds: WHO Classification of Tumours Editorial Board. 5th Edition, 2019, IARC, Lyon, France.
より改編、作表

*1 NETの鑑別:ソマトスタチン受容体(特にサブタイプ2型)が広い範囲で発現している
*2 NECの鑑別:ソマトスタチン受容体(特にサブタイプ2型)が少し発現または発現しないことが多い。また、広い範囲でがん抑制遺伝子が作るたんぱく質「p53」が過剰発現したり、「Rb」が発現しないことが特徴である
・がん抑制遺伝子たんぱく質「p53」:細胞内でDNA修復や細胞増殖を停止する機能を持ち、細胞ががん化したとき細胞死を起こさせる。p53遺伝子による機能が不全となることが、がん発生の要因と考えられている
・がん抑制遺伝子たんぱく質「Rb」:細胞周期の調節に関与しており、細胞分裂の過程回転を抑制する
*3 SCNEC:Small Cell Neuroendocrine Carcinoma
*4 LCNEC:Large Cell Neuroendocrine Carcinoma

肺神経内分泌腫瘍の分類

肺の神経内分泌腫瘍は、「カルチノイド」と「神経内分泌がん」に大別され、さらにカルチノイドは「定性カルチノイド」と「異型カルチノイド」、神経内分泌がんは「大細胞神経内分泌がん」と「小細胞肺がん」に分類されます(表2)。

表2 肺における神経内分泌腫瘍の分類

  細胞形態 核分裂像数 壊死
カルチノイド:定型カルチノイド 5mm以上のカルチノイド形態 <2 なし
カルチノイド:異型カルチノイド カルチノイド形態 2~10 あり(限局性で点状)
神経内分泌癌:小細胞癌 小型で(通常小リンパ球3つ分の直径以下)、細胞質が乏しい、微細顆粒状のクロマチン、核小体がないまたは目立たない >10 あり(しばしば広範)
神経内分泌癌:大細胞神経
内分泌癌
神経内分泌形態(類器官様胞巣、柵状、ロゼット形成、索様)、大型で非小細胞癌の特徴を示す(低いN/C比、水泡様核、疎もしくは微細なクロマチン、しばしば核小体を伴う)、クロマチンは粗造から顆粒状、Ki-67標識率>30%、NSE以外1つ以上の神経内分泌マーカー陽性または神経内分泌顆粒を確認 ≧11 あり(しばしば広範)

WHO 第5版に基づく胸部腫瘍組織分類-v1.3.pdf (haigan.gr.jp) より作表

補足:肺NETは神経内分泌癌とカルチノイドの性質の差が大きいなどの理由から、“カルチノイド”という名称が使われています。

ホルモン症状による分類

NENは、神経内分泌細胞の性質を有する細胞で構成される腫瘍です。ホルモンを分泌して、様々なホルモン症状を引き起こすNETを機能性NETと呼びます。そうでないNETを非機能性NETと呼びます。

機能性NEN

機能性NENは、腫瘍からホルモンが過剰に分泌して、さまざまな症状を引き起こします。分泌されるホルモンによって症状は異なります。(表3)。

表3 機能性NENの種類

表1 機能性NENの種類

【参考】日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS). 膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン2019年(第2版).

発汗、動悸 腹痛、胸やけ 体重減少

非機能性NEN

非機能性NENでは、ホルモン症状は見られません。そのために腫瘍が小さい時に診断されず、発見が遅れることが多いのです。腫瘍が進展して、黄疸や腹痛、腸閉塞などをきたしてから診断されたり、肝臓などに転移してから見つかることも多いのです。

病期(病気の進行度)による分類

病気の進行度による分類では、国際対がん連合(UICC)によるTNM分類が使用されます。T(腫瘍の大きさ)、N(リンパ節への転移の有無)、M(遠隔転移の有無)によってⅠ~Ⅳ期に分類します。膵NENと消化管NENでは分類のしかたが異なります。
膵NENでは、腫瘍の大きさや転移の有無などにより分類されます(表4)。

表4 膵NENの病期分類

表1 膵NENの病期分裂

【参考】Brierley JD ほか. TNM悪性腫瘍の分類 第8版. 2017.
高分化型神経内分泌腫瘍-膵臓(G1およびG2). p102.(金原出版)

消化管NENでは、腫瘍の大きさが治療方針や予後と深く関係します。そのため、腫瘍が発生している臓器(胃、十二指腸、虫垂、結腸など)ごとに、腫瘍の大きさや周囲への広がり具合などにより、細かく分類されます。

遺伝性疾患による分類

NETには、遺伝性疾患に伴って発生するNETがあります。その場合には、他の臓器にも病変が発生していることも多いので、くわしく全身を検査することが必要です。多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)では副甲状腺の過形成症による血中カルシウム値が高くなっている場合が多くあります。


NETの原因となる遺伝性疾患の一覧

  • 多発性内分泌腫瘍症1型(Multiple endocrine neoplasia type 1:MEN1)
  • フォン・ヒッペル・リンドウ病(von Hippel-Lindau disease:VHL)
  • 神経線維腫症1型(neurofibromatosis type1:NF1)

など