神経内分泌腫瘍(NEN)とは
「神経内分泌腫瘍」は、神経内分泌細胞から発生する腫瘍です。WHO分類という腫瘍の分類法により、膵や消化管の神経内分泌腫瘍全体を英語ではNEN(NeuroEndocrine Neoplasm)と総称するようになりました。腫瘍細胞の性質により、比較的悪性度が低い高分化型の「神経内分泌腫瘍(NET:Neuroendocrine Tumor)」と、悪性度が高く低分化型の「神経内分泌がん(NEC:Neuroendocrine Carcinoma)」、それに加えて、NETもしくはNECとがん細胞が混在しているMiNEN(Mixed Neuroendocrine -non-neuroendocrine Neoplasm)の3つに分類されます。さらに、神経内分泌腫瘍(NET)は、腫瘍から分泌されるホルモンが人体に強い影響を与えて、異常な症状が出る機能性NETと症状のない非機能性NETに分けられます。(図1)
また、肺の神経内分泌腫瘍の分類では、膵・消化管神経内分泌腫瘍とは異なる分類法が使用されています。
図1 膵・消化管神経内分泌腫瘍の分類
【参考】日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS). 膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン2019年(第2版).
注意)肺の場合は、名前が異なります。
NEN:NeuroEndocrine Neoplasm
NET:NeuroEndocrine Tumor
NEC:NeuroEndocrine Carcinoma
MiNEN:Mixed Neuroendocrine -non-neuroendocrine Neoplasm
※診断名などについて疑問がある場合は、担当医師にご相談ください。
NENの疫学
消化管NENは1年間の新規患者数が10万人に4人、膵NENは10万人に1人と、まれな病気といえます。そのため、「人口10万人あたり6例未満」を基準とする「希少がん」の一種とされていますが、近年では増加傾向にあります。
2005年と2010年に日本でおこなわれた全国調査によると、5年間で人口10万人あたりの患者数が膵NENでは約1.2倍に、消化管NENでは約1.8倍に増加しています。これは、診断技術の進歩やNENの認知度の向上などが要因と考えられます。
腫瘍のできる部位として、膵臓と消化管が多い傾向があります。消化管の中では、欧米においては中腸NENが多いのに対し、日本では後腸である結腸と直腸のNENが多いといわれています(図2)。
図2 日本でのNENの発生部位の内訳
Ito T et al. J Gastroenterol. 2015; 50: 58-64.