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「実は、父さんPRRT治療を受けることに決めたんだ」
ルタテラ®静注は、神経内分泌腫瘍(NET)のお薬です。NET患者さんのがん細胞に多く存在するソマトスタチン受容体を狙ってがん細胞に結合し、放射線を出します。このように、体の中から放射線でがん細胞に攻撃する治療法を「PRRT(ペプチド受容体放射性核種療法)」といいます。
図1 ルタテラ®静注の作用機序(イメージ)
引用:ルタテラによる治療とは | ルタテラ®で治療を受ける患者さんとご家族の方へ
https://www.product.gan-kisho.novartis.co.jp/lutathera/about/treatment
(閲覧日2024.07.09)
治療を行う前には、ソマトスタチン受容体ががん細胞に多く存在することを検査で確認します。ただし、妊娠中・妊娠の可能性がある方は本剤を使用できません。また、腎臓に障害のある方、授乳中の方は治療前にお申し出ください。
本剤は日本での有効性と安全性を確認した後、2021年6月に保険適用薬として承認されました。欧州では2017年に承認され、使用されてきた治療薬です。
ページ2の注釈
「放射性同位元素を結合させた薬剤を使用する治療法であるPRRTは体内でがん細胞だけを狙うようになっています」※放射性同位元素:β線およびγ線という放射線を出す物質
放射線とは、高いエネルギーをもち、通過する物質に影響を与える電磁波や粒子です。放射線を出す能力(放射能)をもつ物質を、放射性物質と呼びます。放射線治療と聞いて一般的にイメージされるのは、体の外から放射線を当てる方法(外部照射)かと思います。外部照射は、まっすぐ進む放射線の性質を利用しているため、がん細胞の通り道にある正常組織も放射線の影響を受けます。一方で、ルタテラ®静注は点滴によって体内に取り込まれます。本剤はがん細胞に集まる性質をもつため、治療による正常組織への影響が少ないです。また、本剤に使われている放射性物質はβ線とγ線という放射線を出します。β線が届く距離は最大2.2mm(平均1mm未満)と短いため、がん細胞を効率的に攻撃します。γ線が届く距離はβ線よりも長いですが、投与後1週間、周囲の方との距離を保つことで、影響を最小限に抑えられます(図2)。
図2 ルタテラ®静注投与時に放出される放射線 (イメージ)
引用:ルタテラによる治療とは | ルタテラ®で治療を受ける患者さんとご家族の方へ
https://www.product.gan-kisho.novartis.co.jp/lutathera/about/treatment
(閲覧日:2024.07.09)
ページ4の注釈
「放射線は自然界にもあってレントゲン1回分より少ないっていっていたから」
ルタテラ®静注投与1回分で患者さんが受ける放射線量が体へ及ぼす影響の大きさは、490ミリシーベルト(mSv)です。一方で、自然に生活している身の回りにも放射線は存在し、私たちは常に放射線を受け続けています(図3)。本剤の治療を受けた患者さんが基準を守って退院する場合、同居されている方(介護をされる方)の受ける放射線量は、4回分の治療で約2mSvです。これは胃のレントゲン検査1回分(3mSv)や、日本で自然環境から受ける放射線量1年間分(2.1mSv)よりも少ない量です。ただし、子供は大人よりも放射線による影響が大きいため、お子さんや妊婦さん、授乳中の方が居るご家庭では、投与後1週間、患者さんとの触れ合いを最低限にしてください。
図3 日常生活と放射線(単位:mSv(ミリシーベルト))
引用:環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」(平成 26 年度版)
1章 放射線の基礎知識と健康影響 Q&A
https://www.env.go.jp/content/900414212.pdf
(閲覧日:2024.07.09)