消化管の壁には筋肉の層(筋層)があって、それが伸びたり縮んだりすることによって食物が口から肛門に向かって運ばれています。この筋層の中に、運動の号令をかける細胞があり、この細胞は発見者の名前にちなんで『カハ-ルの介在細胞』とよばれています。GIST(消化管間質腫瘍)は、このカハ-ルの介在細胞、あるいはカハ-ルの介在細胞に分化する前の細胞に異常が起きて増殖し、腫瘤を形成したものと考えられています。
カハ-ルの介在細胞はKIT(キット)という蛋白を持っていて、細胞の外から伝わってくる「増殖せよ」という指令は、このKIT蛋白を通して細胞内に伝えられています。正常なKIT蛋白は、外からの「増殖指令」がきてから、「増殖せよ」という情報を細胞内に伝達します。細胞の外からの指令は、私たちの体が必要に応じて出しているものであり、一定の制御下に指令は出され、これに従えば問題は生じません。しかし、異常なKIT蛋白は、外からの指令がなくても「増殖せよ」の情報を伝え続けます。こうして異常なKIT蛋白を持った悪い細胞は増え続け、GIST(消化管間質腫瘍)が成長すると考えられています。ヒトの体をつくっている蛋白は「遺伝子」という設計図をもとにつくられており、KIT蛋白も「c-kit遺伝子」という設計図をもとにつくられていることがわかっています。GISTの患者さんの腫瘍を調べると、75~85%の方に異常な設計図である「c-kit遺伝子の突然変異」が見つかります。しかし、なぜc-kit遺伝子に突然変異が起こるのかはまだわかっていません。
<イメージ図>
-
Joensuu H. Ann Oncol. 2006; 17 suppl 10: x280-x286